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〜 園だより「ひぐらし」5月号として

 緊急事態宣言の後、登園自粛期間に入った翌日のこと。

 私たち職員のもとに、たくさんのお手製のマスクを届きました。在園家庭のおばあちゃんと、そのお友だちのご近所のお寿司屋の女将さん、お二人の労作。何十枚というその量にも圧倒されたのですが、その一つ一つが丁寧に包装され、サイズや宛名のシールまで施された、まるで売り物のような出来栄えなのです。

 ああでもないこうでもないとアイデアを交わしながら、楽しげに、でも真剣な眼差しで作業を進めるお二人の姿を想像して、一緒に元気もいただいたような気持ちになりました。

 そこに、

はじめての挑戦でしたので それぞれに個性がありますことを ご了承くださいませ。

 と始まる、1通の手紙が添えられていました。結びには、

必要な方に…必要なところに…届きますように

 と。そして紙面の上部に、青いペンで記されたタイトルが…「ふぞろいのマスクたち」。

 なるほど。

 このチャーミングで、少し懐かしいネーミングに思わず頬を緩めた私たち。そして、柄選びに気を取られている若手職員たちに、「この洒落、わかる?」と問うも、見返す表情には、「それが何か?」といった文字が。こうやって世代間の分断がさらに深まっていくのもまた、このコロナ禍というものでしょうか。

 (マスク、手袋、アルコールなど、他にも多くの方に寄付いただきました。この場を借りまして、深謝。)

 登園自粛期間に入り、平日の平均で2割ほどの出席率が続いています。つまり、登園している子どもたちも、他者との接触がほぼ8割減、同時に感染リスクも大きく低減できているはずです(これは私たち職員にとっても同様です。)。
 これは、保護者のみなさんが達成してくれたことなのです(けれど、ありがとうは言いません。(^_^)/ )。

 そして、出勤をせずに済んだ職員は、我が子を登園や学童通所させずに済みますので、次はその園や学童職員の出勤が減り、その子どもたちは3密を回避でき、結果、その子たちが通っていた施設も、3密が大きく低減されていくわけです。

 まるで「風が吹けば、桶屋が儲かる」ように、私たちはつながりあって、影響を与えあって生きていることを、今回ほど実感したことはありません。

 先日、まずは八王子市の登園自粛の延長が、続いて国の緊急事態宣言の延長が決定しました。やっとたどり着いたと思ったら、道はまだその先へと続いていた…そんな気分です。
 「感染拡大は緩やかに減速している」との説明を聞きながら、少し緩んでしまいそうな心を、次は一体何で奮い立たせていけばよいのでしょうか。

 そこで、私からみなさんに、投げかけたいことがあります。

 「ただただ、医療現場など最前線で頑張ってくれている人たちを支えるために」

 そう考えたら、私たちは、もう少し頑張れはしませんか。

 ことの事態はある意味では単純で…退院する人数より、入院して来る人数の方が、まだまだ多いというのです。ここを解消しない限り、医療従事者たちの困難は終わらないし、コロナによるこの危機は去らないのです。

 今は、メディアや通信技術の発達で、かつてより、ずっとたくさんの情報を手にできるようになりました。東日本の震災の時も、その生々しい惨状を様々な報道や映像を通して、私たちはそれを目の当たりにすることになりました。そして、その悲惨さ深刻さというものを、十分ではないにせよ、離れた場所に暮らしながら感じることができたように思います。

 しかし、今回一番の惨状であるはずの医療機関の内部の様子を、人の生き死にの現場を、克明に見聞きすることなどできるはずもありません。すぐそこの病院の中で起こっていることなのに、その深刻な状況や、従事する方々の奮闘や苦闘を垣間見ることが叶わない。なので、その危機感やその重圧を、私たちは中々思うように共有できないというのが、この災害の特殊性だと思うのです。

 だから、この爽やかな五月晴れに抱かれながら、一見穏やかに続く自粛生活の効果や、反対にそんなつもりもない私たちの身勝手な行動が、どんな惨状につながり、どんな影響を及ぼしているのかが、実感しにくいのです。
 そして、それがわかる瞬間というのは、いきなり当事者であるという点が、今回の怖いところ。

 だから今、私たちに本当に必要なのは、忍耐や我慢ではなくて…「想像力」なのではないでしょうか。医療機関を始めとした、私たちの生活の「安心(基盤)」を支えてくれている人たちの「今」は、実は私たちの行動としっかりとつながっていること、そして、私たちの行動の結果なのだということを、精一杯、想像してみてほしいのです。

 そして、そこで頑張ってくれている人たちを、保育園としてサポートできること、それも、私たち保育者の誇りなのです。

 だからもう少しだけ、Stay Home & Stay Seibi

 このコロナ禍とは関係なく、平時、世界では、毎日数千人の子どもが肺炎で命を落とし、毎日数千人の子どもが、感染症で命を落としています。毎日です。

 地球規模の格差によってアフリカ南部、南アジアなどに偏るこうした状況に対し、普段、一定の関心にとどまる先進国の首脳たち。それが、自分たちに問題が降りかかるやいなや、こんなにも顔色を変え懸命になるものなのか…今の各国の騒ぎを揶揄する声も聞こえてきます。

 このひと月は、私たちの「想像力」が試されるひと月です。

 この窓の向こうに広がる、抜けるような空の青さを、最前線で頑張ってくれている方々へ捧げます。それぞれが、それぞれの場所で、それぞれの思いで見上げる、私だけの空ではないけれど。

園長 折井 誠司

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