フィード
投稿
コメント

夏の仲間と暮らして

IMG 8582

この猛暑も、ちょうどお盆を越えた週末は、中休み。そこに流れ込んで来た秋の空気に乗って、園庭にもトンボが飛んでくるようになりました。毎年、このトンボたちの群舞が、誠美の夏の終わりと、秋の訪れを運んできてくれるのです。

しか〜し、そんな感慨をよそに、視線の先には、網を片手にいつもの倍の速さで駆け回る一群が。セミ捕りには少し飽きてきたこの頃、新たなターゲットの登場に、にわかに色めき立つ子どもたち。

ひと所にじっとすることの少ないトンボの捕獲は、セミよりも数段難しいと思うのですが、それでも、ひとりの子が「ほら!」と私の目の前に差し出された手には、指の間で羽が大きくひしゃげた、少し苦しそうなトンボ。

よくぞと関心しながらも、あの羽で、再び飛び立てるものなのか…いや、そもそも放してはもらえたのか…あのトンボのその後の運命が、少し気になります。

園の敷地には、私たちの想像以上に、様々な生物が暮らしていて、そういった生物との出会いや関わりが、子どもたちの毎日を本当に豊かにしてくれます。

畑付近には、ここ数年大きなガマガエルが住みついているのをご存知ですか?毎年初夏の夕暮れ、それも園を閉める頃になると、草むらから飛び出してきて、戸締りをする職員たちを驚かせています。それ以外の時期は、一年の大半をどこかに隠れて過ごしているのですね。

ベビーカー置き場のある倉庫付近は、トカゲたちの住処になっているようで、臆病な彼らは、ちょっと人通りの少ないあの場所が都合がいいようです。

この夏は、以前ご紹介した芝のポット苗を、駐車場で育てていたのですが、実はその芝生の茂みに、そのトカゲたち数匹が住みついていたのです。いつも水遣りをするたびに、驚いて飛び出して来る…可愛い奴らでした。(子どもたちに内緒にしておいたのは…武士の情けです。)

特に夏の間は、不運にも捕獲された様々な生き物たちと、私たちは一緒に暮らすことになるのですが、それにしても、子どもたちの「捕獲したい」、「飼育したい」という思いは、一体どこから湧き上がって来るものなのでしょうか。DNAに刻まれている本能なのでしょうか。

「自然環境や生命を大切にする」という点では、まずそれらと出会い、関わっていく必要があるので、捕獲や飼育は大いに結構なのですが、飼育ケースであるが故に、子孫を残す事なく短命に終わる姿を目の当たりにすると、これをどう考えるべきなのかと、迷いも生じます。

ずっと幼い子どもになると、アリの行列を踏み潰してみたりという、少々残酷にも思えるところから、生命との関わりが始まるという側面もありますよね。

他の生命の犠牲に生かされる…私たち人間も、その連鎖の輪の一員なのですが、こうした子どもならではの、ささやかな殺生くらいは許容されているのかもしれませんね。将来、この連鎖の輪のよき担い手になるための準備として、少し乱暴で、大人がハラハラするような生命との関わりも、実は必要なのかもしれません。

以前ご紹介した研究保育で、4・5歳児クラスの保育を観察した時のこと。ある虫取りの場面が、午後のカンファレンスで話題に上がりました。

「この年齢になって、なんの躊躇もなく、虫を潰している姿があるとしたら、それを子どもらしいと言って、手放しで肯定はできないのではないか。」

との発言…もちろんその通りなのですが…私は瞬時に、以前に聞いた子どもの声を思い出していました。

「先生、あそこに蜂がいるんだ。シュー(殺虫剤)で、やっつけて!」

園内で巣作りを始めていたならまだしも、たまたま通りかかった蜂に対しても「駆除」を求める様子は、私たち保育者を含め大人たちが、安易な殺生を繰り返す姿を見ているからなのではないか…と少なからずショックを憶えたのでした。

私が、園庭の雑草を抜きながら、いつも考える事は、芝と雑草の違いは何なのか…ということ。雑草という名の草がないのと同じように、害虫という名の虫もいない…徘徊する蜂は、距離をおいて見守れば、向こうから攻撃することはない…こちらがうまい対応をとってあげれば、それは害虫でなくなる…では、うまい対応って何?問われるならば、私は、「ほどほどの共存」と答えたい。
周りの豊かな自然と生命に感謝をするのなら、室内を這うアリやクモやゴキブリにだって、少しくらい軒を貸してあげてもって…思うのです。

人間と自然や生命との関わりって、綺麗事だけでは済まない、難しさがあります。こうしたジレンマに悩み続ける事が、連鎖のピラミッドの頂点に立つ者の責務なのかもしれませんね。そして、この正解のない課題に向き合い、粘り強く考え続ける力をつけることが、これからの子どもたちの学ぶ意味だと思うのです。

例年通りなら、そろそろ、夕闇降りる園庭を、コウモリが舞い始める頃なのですが…ご存知でしたか?…これも、食事にはもってこいの場所だからかと。

(平成30年8月号園だより「ひぐらし」より)

返信する